
コンサルタントの津森です。
風俗業界に限った話ではありませんが、IT化やグローバル化の波が一気に押し寄せ、ターゲットとなる顧客ひとり一人の生活環境や消費行動にも変化の兆しが見え始めています。
2020年、目まぐるしく変わる業界の動向
風俗業界は今までも、常に新しい方向性を模索してきました。人妻店やソフト路線など、これまで「風俗」そのものに対する関心の薄かった層を取り込むことにも、一定の成功を収めてきました。業界全体を通して、ある種の安定期に突入したといってもいいかもしれません。
しかし、もちろん油断してる場合じゃありません。現場で働いている方は特に、想定していた以上のスピードでさまざまな状況が激変していくのを目の当たりにされていることと思います。常に先手を打たなければ、2020年となった今、さらなる発展は望めないでしょう。
ここで少しばかり、過去を振り返ってみましょう。
80年代のバブル崩壊から近年にかけて、風俗において何が一番変わったのか? これに関しては詳細を述べると長くなるし、当然異論もあると思われますが、個人的にはプロと素人の垣根が失われたことだと思います。要するに男女ともに、風俗に対しての敷居が低くなったということです。
1999年に改正風適法が施行されて以降、主流だった店舗型が業態の変化を余儀なくされ、デリバリー型へと移っていったことも、プロと素人の垣根を取り払う一因だったのではないかと。また“電話1本で”というお手軽さも、こうした流れに拍車をかけたと思われます。
反面、デメリットも当然ありますが、本題から遠ざかっていく一方なので詳細は省きます。
そして2020年現在ですが、いろんな方がいろんなことを言って、景気がいいんだか悪いんだかよくわかりませんが、整理して考えると単純に儲けてる人にとっては景気が良くて、そうでない人には悪いと、まあ2極化が進んでいる状況でしょうね。なんにせよ先行きが不透明であるのは、業界に関係する誰もが認めるところだと思います。
私個人の意見を述べさせていただくなら、状況的に風俗が激変した時代と、どこか似ている印象もあります。とはいえ完全に一致しているわけでもありませんが。
付け加えると、ここ数年は風俗と貧困を結びつけるよう記事やネットニュースをよく見かけました。貧困にあえぐ女性が風俗に走るだとかって話・・・でも実は不景気のときほど、女性タレントが集まりやすいという明確なデータは存在しません。現場で働く方々は実感として、そういう空気を感じることもあるかもしれませんが、数字の上では誤差の範囲といえます。
また、風俗業界は景気の良し悪しの影響を受けづらいともいわれるていますが、少なくとも短期的には景気の影響をもろに受ける業界です。実際にボーナスシーズンは売上が伸び、繁忙期となるのはみなさんご存じの通りです。
これからオリンピックで一時的には、景気が良くなると予想されます。しかし、あくまで一時的にです。先行きが不透明であることに変わりありません。1999年の改正風適法施行のときのように、ピンチをチャンスに変えていく必要があります。
究極の癒しに射精は必要か?
安定期の今こそ、新しい試みにチャレンジする絶好の機会とも言えます。仮に失敗したとしても、損失を取り戻せるタイミングであること、また結果につながらなかったとしても、種を蒔くという意味では、決して無駄にはなりません。(行動の前に失敗したときのことを話すのもなんですが・・・)
では、なにをはじめるか?ここ最近の風俗業界における流行と傾向を分析すると、2つのキーワードが浮かび上がってきます。
ひとつは「低価格」、もうひとつは「癒し」です。「低価格」はともかく、「癒し」というのは漠然としすぎているし、いまさら感もあるので言葉を変えると、要するに“射精以外の部分で楽しみを見いだしたい”ということになるでしょうか。
濃厚なサービスが売りのハードな店舗も好調なところは依然好調ですが、それと同時に近年、ソフトサービスの店舗も台頭してきました。エステやオナクラなど、いまやジャンルとして完全に確立し、ますます人気を伸ばしています。この流れの延長線上に、新しい試みのヒントが隠されていると私は思っています。
ソフトサービスを突き詰めていくと、最終的には射精すら必要なくなります。というと極論に過ぎるかもしれませんが、射精することが風俗に通う最大の目的でなくなる可能性は高いしょう。その場合の射精は、夢から覚める合図のようなニュアンスに変わるというのが近いイメージでしょうか。
射精とは無縁であるところの地下アイドルやコスプレイヤーにお金を落とす男性も珍しい存在ではありません。おそらくそういった人たちは生活環境や消費行動から察するに、風俗への関心が薄いと考えられます。直接的な快感よりも、優先すべき娯楽があるということです。(こうした傾向もユーザーがニッチ化する一環かもしれませんが)
ファンとして地下アイドルやコスプレイヤーに近づく人の中には、もちろんあわよくばと考える人もいるでしょう。しかしそれは極一部で、多くはアイドルと本気の恋愛ができるとは考えていません。ただ純粋に応援できる対象を求めた結果、アイドルなりコスプレイヤーに行き着いただけのはずです。
つまり、アイドルなりコスプレイヤーといった注目度の高い(一般人と比べて)存在に目が行き、たまたま選ばれただけであって、ファン活動の対象は必ずしもアイドルでなくとも構わないのです。たとえば、それが風俗嬢であったとしても同じことがいえます。
しかし、実際にはアイドルに貢ぐような感覚では風俗に通ったりしないですよね。お気に入りの女の子がいて、たまにプレゼントを持っていくことくらいはよくある話ですが、純度の高い崇拝や奉仕を伴う、いわゆるファン活動とは一線を画しています。
逆に女性や運営サイドも、純度の高い崇拝や奉仕に対しての心構え、備えがないのが実情でしょう。今までは想定する必要のなかったことですから当然です。
こうした射精以外の部分に楽しみを求めるタイプのお客様に対して、残念ながら現在の風俗業界は対応できていません。先に述べたように、心構え、備えがないというのも理由のひとつですが、そんなことは大きな問題ではありません。今すぐ心構えなり、備えなりをすればいいだけですから。
風俗が風俗でなくなる日
問題はもっと根深いところにあります。風俗が風俗であることこそが要因なのです。なにを言っているんだこの人・・・とか思わないでください。わかりやすく言えば、射精に伴う快感が、崇拝、奉仕する心の純度を下げてしまうということですね。快感という見返りがあると行為の純度が損なわれ、純粋な愛情ではなくなってしまう、無償の愛だから獲得できた尊さは失われ、どこにでも転がっている愛情のショッピングに堕してしまう・・・あんまりわかりやすくないですね。
なんというか、マスターベーションに罪悪感を感じるのと同じようなものです。(今は罪悪感を感じなくても、かつては感じていたはず)
ただひとつ言えるのは、射精を主たる目的とした風俗では対応できない層も、今後は開拓していく必要があるということ。それには風俗の枠組みを再構築し、新たな価値観を付与しなければ対応できないということです。
射精がなくても風俗と見なされる業種(セクキャバやおっパブ等)もありますが、それでも一般的な認識として、風俗か風俗でないかは、射精のあるなしによる判断が大きいと言わざるを得ません。
では、キャバクラだったらどうなのか。当然キャバクラは射精とは無縁(?)の業種です。ある種、アイドルに貢ぐのと似た感覚でお店に通うこともあるでしょう。しかし、純度が高いとは言えませんよね。むしろ不純な欲望が原動力だったりします。
ただ、最近は「個室キャバクラ」「デリバリーキャバクラ」といった、今までにない形態での営業も盛んに行なわれています。密室でより個人的な体験を提供できるとすれば、キャバクラの弱点を克服する可能性のある野心的な試みと言えます。
またコンパニオン派遣をUber Eats感覚で行なうサービスも台頭してきていると聞きます。これらが軌道に乗った場合、風俗業界の新たなライバルとなるかもしれませんね、なにが受けるかわからない世の中ですから・・・今後も動向を注視していきたいと思います。
少し脱線しましたが、脱風俗における射精はあくまで副次的なものであり、それよりも個人的関係性に飢えてる方を引き込み、自分だけの体験を提供できる構造の獲得が最優先となるでしょう。
新たな価値観の創出は、ブランディングと言い換えることができます。本来のブランディングの意味とは多少ずれる部分もありますが、射精を主たる目的としない新しい風俗の業態を創るという意味ではふさわしい言葉だと思います。
風俗が風俗でなくなる日、それは風俗がより大きな枠組みを得て、新たな地平を切り拓くときです。そんな新しい時代をともに築いていきたいという方を、風俗業界は歓迎いたします。