コンサルタントの津森です。
時代が移り変わっても、変わらないものがある。マーケティングの基本であるAIDMAの法則もそのひとつだ。新しいアイデアに目を向けるのも大切だが、基本となる理念を今一度見つめ直すことで、また新しい発見があるかもしれない。
目次
『AIDMAの法則』とは?
1920年代にサミュエル・ローランド・ホール氏によって提唱された『AIDMAの法則』は、現在も消費者が商品を購入する際の心理プロセスモデルとして各方面で活用されている。
サミュエル・ローランド・ホール氏は広告、販売といった分野で多くの著作を残しており、コンサルティング、マーケティングの始祖とも呼べる存在。AIDMAの法則も著書『Retail Advertising and Selling(小売りにおける宣伝と販売)』の中ではじめて提唱された理論だ。
ご存知の経営者も多いかと思われるが、Attention(注目)、 Interest(興味)、Desire(欲求)、 Memory(記憶)、 Action(行動)の頭文字をとって「アイドマの法則」と呼ばれている。
認知段階 | A | Attention(注目) |
感情段階 | I | Interest(興味) |
D | Desire(欲求) | |
M | Memory(記憶) | |
行動段階 | A | Action(行動) |
約100年前に提唱された消費者行動モデルが、現在でも十分通用するというのも驚きだが、考えてみれば、風俗業もその根幹は100年前とほとんど変わっていない。人間の本質というものは、いつの時代も変わらないということだろうか。
もともとは小売り・販売業を対象として提唱されたが、それ以外の業種においても効果的であることは、長い歴史の中ですでに立証済みだ。もちろん風俗業界においても有効であり、率先して取り入れていくべき理論である。
認知段階~Attention(注目)~
まずはお客様となる消費者に、店舗の存在を知ってもらわなければならない。認知していただくことが最初のステップとなる。
認知していただくための手段はいくつかあるが、今の時代、メインとなるのはやはりWEBになるだろう。ひと口にWEBといっても自社サイトから風俗情報サイト、SNSまで多種多様だが、見込み客にお店の存在を知らせるという販促を行うことには変わりない。媒体は違っても“Attention(注目)”させるという目的は同じだ。
掲載先やタイミング、媒体のカラー等を考慮しながら、いかにAttention(注目)されやすい広告を制作するかが課題となる。
感情段階①~Interest(興味)~
「こんなお店があるんだ」、と知ってもらえても、興味を持っていただかなくては意味が無い。“Attention”を活かすには、お店の存在を知って、「遊びに行きたい」と思っていただくための工夫が必要となる。
人は認知した事案に対して興味を持つか、持たないかを瞬間的に判断する、という心理学上のデータがある。ここで重要なのは、瞬間的に判断するという部分。つまり、“Interest”の段階においては、最初に目に飛び込む画像が最も大切になるということだ。
興味を惹く画像、風俗で言えば魅力的な女性の写真ということになるだろうが、消費者はまずここを見て取捨択一を行っている。
女性のポーズや構図、顔の角度、また顔出しNGであればどのように隠すか、単に手で押さえるか、花などの小道具を用意するか、また後から画像加工でハートを乗せるなどの処理を行うか・・・興味を持っていただくための選択肢はいくらでもある。
いかにして、次に取りあげる“Desire”につなげていくかが思案のしどころとなる。
感情段階②~Desire(欲求)~
“Interest”の段階で興味を持っていただいたとしても、ご来店いただくまでにはいたらないだろう。まだ超えねばならないハードルはある。
魅力的な画像に興味を抱いたら、次は「どんな店なのか?」「どんなサービスなのか」といった部分が気になるはず。消費者は、「興味はあるけれど安心できる店なのか」、また「興味はあるけれど価格が高い」など、興味と同等の不安も抱いている。こうした不安を取り除くのが、キャッチ、宣伝文などの文章だ。
具体的で分かりやすい価格設定を提示し、場合によっては割引サービスも行っているという文言、また女性のタイプやプレイ内容なども、簡潔で読みやすく、なおかつ目立つ位置に配置するのが理想だ。もちろん興味を欲求に変えていくためには、ある程度、扇情的な文章でなければならない。
自社サイトであるなら、画像と文章の位置やバランス、可能であれば読みやすいフォントやフォントサイズなど、デザイン面にも気を配りたい。
しかしながら、特に文章、デザインに関しては絶対的な正解が無いジャンルである。時代によって流行もあるし、消費者によって欲求を刺激されるツボも違ってくる。コンセプトを明確にして、試行錯誤を繰り返すことが肝要だろう。
感情段階③~Memory(記憶)~
興味を持ち、欲求を刺激されたとしても、すぐその場で電話する、勢いそのままに店に行く、というのは相当なレアケースだろう。より強く印象付けるために“Interest” “Desire”を繰り返す必要がある。強く惹かれるイメージを記憶に刻み込むことで、興味を持続させることができる。興味が持続することで欲求はより強く感情を揺さぶる。
例えば、消費者自身がお店に行ったときの様子や感覚を連想させやすくする文章であったり、女性の生の声や動画なども記憶に残りやすい要素となる。
女性のプロフィールに消費者自身との共通項を見つけた場合なども、記憶に残りやすい。女性に対しての親近感が増し、直接会ってみたいという思いは確実に増すはず。といっても、あまり狙ってできることでもないが。
また声に出して読み上げたい店舗名なども記憶に残りやすいポイントではある。
これらを繰り返すことで、サービスや女性、店舗への興味が増し、実際に遊びに行くという行動につながる。
行動段階~Action(行動)~
注目を集め、興味を持たせ、欲求を刺激し、記憶させる、というプロセスを経た消費者は、具体的数字を申し上げることはできないが、少なくない数、実際に店舗を訪れてくれるはずだ。しかし、もちろん全員ではない。「機会があれば遊びに行きたい」、ここまでの誘導はできるが、そこから先はお客様次第ということになる。ただし、その中でもなるべく多くの方に来店いただけるよう、工夫すべき点はある。
店舗型、無店舗型問わず、アクセス、コンタクトの方法を明瞭にすることだ。いざ店に行こう、あるいは電話をかけようと思っても、「どう行けばいいのか?」「どこに電話するのか?」が分かりづらいと行動意欲がそがれてしまい、せっかく作ったチャンスをみすみす逃してしまいかねない。
常にお客様の立場で考え、“Attention”から“Action”までのプロセスを見直しつつ、ブラッシュアップさせていくことが集客のポイントとなるだろう。
最後に今一度AIDMAの法則を整理しよう。
- A…各種サイトに広告を打つ
- I…興味を惹く画像
- D…欲求をあおるキャッチ
- M…記憶に残る店名、画像、文面
- A…実際に足を運ばせる
簡略化させていただいたが、概ねこういうことだ。
今回は主にWEBサイトでの活用について述べたが、AIDMAの法則は接客や電話対応にも応用できる。お客様が来店した際の心理プロセスを読み解く方法がAIDMAの法則なのだから。
AIDMAの法則はマーケティングの基本であり、接客、サービスの原則でもある。すぐに結果が出なくても、その本質を見誤らずに活用することで、ユーザーの裾野は広がり、潜在的なお客様は、この先も間違いなく増えていくだろう。
ちなみにAIDMAの法則をベースに、より時代に即した『AISAS(アイサス)の法則』『AIDCA(アイドカ)の法則』『SIPS(シップス)の法則』というものもある。今回は基本となる風俗業界におけるAIDMAの法則をご紹介したが、また機会があれば、その他類似の法則についても検討してみようと思う。